身頃の袖ぐり寸法が42.6㎝、袖山寸法が45.8㎝、イセ分が3.2㎝程の基本的な1枚袖ブラウスの袖付け方法です。イセ分は袖付け寸法の7%強、セットインスリーブとしては最も基本となるデザインと考えてよいかと思います。7%よりも少ないと、身頃とのバランス如何では腕の厚みをカバーしきれなくなりますし、あまり多いと生地によってはイセとしてこなしきれずにギャザーになってしまいます。
綿生地のようなイセ込みしにくい生地の場合はイセ分量は7%程度に押えておいた方が縫いやすいかと思います。梳毛ウールのような織りの粗い生地の場合は8%程度でも十分にこなしやすい範囲です。
前準備として身頃の袖ぐりと袖の袖山寸法を測り、その差寸を算出しておくと作業が楽になります。
市販の型紙では、想定した生地で十分にこなしきれる範疇でイセ分が追加されているはずですので、生地の種類を大きく逸脱しなければ綺麗にイセが入ります。また、袖の形状やイセの分量についてはトレンドや時代の流れというものも加味されます。近年ではブラウスなどの軽衣料でこのようないせ込みのあるブラウスなどを見かけることは少ないかもしれませんが、ジャケットやコート類の重衣料にも通じる部分ですので、ぜひ押さえておきたいテクニックです。

セットインスリーブ(裏無し・1枚袖)の袖付け方法ー前編ー
材料・道具
つくりかた
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身頃を組み立てる
セットインスリーブの袖付けは「丸付け」と言われる手法で組み立てていきます。丸付けというのは身頃と袖をそれぞれ分離した状態で形成し、最後に袖ぐりを縫い合わせるという手順になりますので、まずは身頃をパターンの指示通りに組み立てて縫い代の始末をしておきましょう。
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袖を形成する
次に袖を形成していきます。まずは生地が平らなうちに袖山のイセ込みのための粗ミシン(もしくはぐし縫い)を入れておきましょう。
粗ミシンの場合はミシンの針目を少し大きくして、必要に応じて上糸か下糸の糸調子を緩めます。針目の大きさ・糸調子共に生地によってかなり違いますので、端切れで試し縫いしてみましょう。糸調子が緩すぎるとギャザーになりやすいので注意しましょう。図のように、1本目は出来上がり線から0.2㎝に。2本目は出来上がり線から0.5~0.6㎝に入ります。
この間隔も決まりがあるものではありません。
1本目があまりにも出来上がり位置に近いとミシンで縫いこみやすく、離れすぎるとせっかく潰したイセ分を縫い目の中に押し込めません。また、手縫いの場合はしつけ糸2本どりでぐし縫いしてください。point!
イセ込みが苦手な方の多くは、アイロンではなく粗ミシンやぐし縫いが甘い事が多いです。粗ミシンの場合は糸調子がきつすぎても緩すぎても難しくなりますが、どちらかと言えばややきつめの方がイセ込み作業は楽になります。しつけ糸を使ったぐし縫いの場合は、必ず毛羽立っていて生地との抵抗の強いしつけ糸を2本どりで使用してください。フィラメント系のつるつるした糸では、せっかく引き寄せたイセ分が逃げやすくなります。このあたりの詳細は「ぐし縫い」の項目をご覧ください。 -
イセを殺す
粗ミシン(ぐし縫い)の糸を引いてイセを殺していきます。糸を引いて最初に計測しておいたイセ分量を縮め、袖付け寸法とおおよそ同寸になるように袖山を丸く整えます。
粗ミシンを引いたら、浮いた縫い代を軽くアイロンで潰します。この時、アイロンのエッジを使用して出来上がり線から縫い代側にだけアイロンをかけます。袖のふっくらとした丸み分を潰さないように注意しましょう。縫い代ではない部分へアイロンをかける時は必ずドライアイロンで、ふわっと軽くかける程度にしておきましょう。
上図では仕上げ馬を使用してアイロンをかけていますが、仕上げ馬をお持ちでない方は下図のようにマットの上で平らな状態でアイロンをかけても大丈夫です。その為に、袖下を縫う前にある程度のイセを始末しています。この時のイセの分量はきっちりとした寸法である必要はありません。ここではざっくりと処理をしておいて、この後の工程で微調整しながら整えて行くイメージです。
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袖下を縫い合わせる
袖下を縫い合わせて縫い代の始末をします。
このほか、袖口等の始末がある場合はここで済ませておきましょう。細かい作業は出来るだけパーツ同士がバラバラなうちに済ませてしまった方が楽です。ここで両袖を確認してみて下さい。袖の表裏は間違えていませんか?表裏のわかりにくい生地だと、気付いたら右袖が2本。。。ということがしばしば起こります。左右の袖が揃っているか確認しておきましょう。